見つめるその先はいつもと変わらない。







ただ1つ、変わったことと言えば
いつも見つめているその人物が、こちらの視線に気づいたということ。














視線に気づいたその人物は、はじめは目を合わせたが
数秒経つと、後ろやら周りをキョロキョロと見始めた。
その後また目を合わせたかと思うと、首を傾げてどこかへ行ってしまった。










「・・・・・・・フフッ・・」








笑みがこぼれる。
とりあえず、自分の存在に気づいてもらえたことに喜びを表さずにはいられなかった。












夕食の時間、辺りに人がいないか確認して、こっそり部屋を出て行くが、
毎度のように化粧や香水のきつい匂いを漂わせた女達に囲まれることとなった。
なぜこいつらは僕の居場所がわかるのだろう??
この僕でさえわからない。











「ねぇ、トム。今度の休日一緒に過ごさない?」






おそらくこの女は、僕を取り囲んでいる女達の中心人物だ。
女特有のキーキー高い声で僕の名前を呼び、
あの大嫌いな化粧と香水の匂いを漂わせて僕の腕に絡みついてくる。
あぁ、気持ち悪い。吐きそうだ。
その汚らしい目で僕を見るな、触るな。







「・・・・・ごめん。今度の休日はちょっと先に用事が入ってて」


「ぁあん、いいのよトム。今度開いた日に誘ってね」


「うん、ありがとう。それじゃぁまた今度」













やっと解放され、早足で食堂へと向かう。
とりあえずあの場、あの女共から離れたかった。





早足で向かえば、いつもより早く目線の先に食堂が見えた。
ホッとして速度を緩めれば、ある人物に目がいった。










ー!!早く早く、今日はあんたの好物ばかりだよ!」


「え、嘘!!ちょっと待ってええ!!!!」







肩につくぐらいの髪を揺らして食堂へと走っている人物は、
友人らしき者に名前を呼ばれている。いつも自分が見ている人物だった。












やっと彼女の名前がわかった。
彼女、を目で追えば、スリザリン側の席に座っていた。
運良く彼女の背中の後ろには誰も座っていない。
もう一度歩く速度を速めれば、直ぐに辿り着いた。





椅子に座る振りをしながら、彼女を盗み見る。
初めてこんなにも彼女の近くに来て、彼女を見たと思う。









「・・・・!!」


『・・・・あ、どうも』


「、こんばんは」




急に先ほどまで見ていた後頭部から顔が出現した。
ハッとしてよく見れば、が振り返って僕を見ていた。
気まずかったのか、「どうも・・」と小さく呟いた
いつもの癖であいさつを返していた。





二人の間に沈黙が流れる。
は既に、なぜ振り返ってしまったのか後悔の渦にかられていた。
リドルはリドルでいつもの余裕がなくなっていた。










「えっと、ごめん困ってるよね。ご飯、食べなよ」


『あ、いえ、全然。えっと・・・リドルさんも、席についたらどうでしょう、か』


「!!僕の、名前・・・・」


『あっ・・・・・すみません。あの、リドルさん、有名でして・・・』










目を見開けば、はびくりと肩を揺らして謝罪する。
そんな中、僕は驚きと嬉しさとで体が熱を持つのを感じられた。
自分のことを知っていてくれた。
いつもだったらそんなこと言われると嫌な気にしかならない。
しかし今回は違った。












「そんな、謝らないでよ」






ははっと笑って言えば、は恥ずかしいのと困ったのとが混ざり合った顔をして
でも、そんな。プライバシーの侵害です。とかなんとか言っている。
そうだ。いいこと思い付いた。







「それじゃぁ謝る代わりに、貴方の名前、教えて下さい」


『え、私なんかの名前を・・・!?』


「なんか、じゃありませんよ。それに、貴方だけ僕の名前知ってて、僕が知らないのは不公平でしょ?」


『あ、そうですよね。じゃぁ改めて、って言います』


・・・、でいいかな」


『はい』


「そうだ、僕の名前はトム・マールヴォロ・リドル。リドル、でいいから」


『okです。・・・・・なんか、嬉しいですね』


「?何で??」






そう問えばは、寮とか関係なしで、しかも座ったところが近かっただけで
知り合いになるなんて、すごいじゃないですか。と微笑みながら言っていた。




偽りのないの笑顔に、少しの後ろめたさをおぼえながら
僕の心も温かくなった気がした。








「ねぇ、今度から見かけたときとか、声かけてもいい?」


『そんな、もう全然声かけてきてください!』


「そう言ってくれて嬉しいよ。もなるべく声かけてね」


『はい。なるべく、努力をします』







俯き気味のの顔を、下から覗きこむように見れば
「ご飯っ食べますね!」と威勢良く後ろを振り向きご飯を食べ始めた。





口元に手を当てながらクスクス笑えば、は気づいたのか
手や体の動きがぎこちなくなった。





今日は本当に心満たされる日だ。























翌日、朝食を食べに食堂へ行けば、昨日とほぼ同じ席にがいた。













そう名前を呼ぼうと口を開けば、ちょうど同じタイミングでが振り向いた。
視線が、絡まる。
」と口を動かすと、目尻を下げて笑顔を向けてくれた。
自然と緩む顔に合わせて手を振れば、恥ずかしそうに手を振った。




















絡める

















視線に気づいて