「特発性拡張型心筋症、ですね」

「・・・・・・・・・・・」

「心筋低下のため心臓のポンプとしての機能が低下し、心筋の厚さも薄くなり、心臓の内部が拡張する病気です」




言葉が、出なかった。
ただ医者の声が頭の中で淡々と響いているだけ。



「今のところ心臓移植が一番リスクが低いですね」

「それではまず薬を投与して進行を遅らせて、ドナーが付き次第手術をしましょう」

「では明日から入院です。晋助くん、頑張ろうね」




命に、危険がある病気だということだけ、わかった。















患者とナースと変な気持ち








最初は軽い動悸。少し動いただけで心臓がドキドキして。 ただの風邪かと思って放置していた。体育の時だった。 俺は、倒れた。直ぐに病院に運ばれた、らしい。




原因は、わからない。未だに解明されていないらしい。 とりあえず無理な運動はせずに安静に、といこと。 分かりやすく言えば、俺の命はあと少しかもしれない、ということで。










「晋助、たまには病室を出ない?寝たきりじゃつまらないでしょ」

「・・・・・・・・・・・いい」

「たまには気分転換に・・」

「いいって言ってんだろ」

「・・・・・・・・じゃぁ、また来るから」





親は、邪魔だ。
うるさい。
人の気持ちを知らないで、わかってるような素振りをする。
だからむかつく。嫌いだ。





「・・・・・・・クソッ」




3日が経った。
特に何かが変わることもなく。
暇。
ただ暇で暇で・・・









暇「晋助さん」




誰だ。



「・・・・・・・・・・あ゛?誰だ」

「初めまして、私晋助さんの担当になったといいます。よろしく」

「・・・・・・・・・」





女が、来た。
カルテだろうか、何かを持ってニコニコ顔で近寄ってきた。
名前は
肩まである栗色の髪に丸顔、デカ目。
特に目立つところがない女。唯一あるといえば、声が少し低いところだろうか。





「何か変わったこととかあれば何でも言ってね、そこのボタン押せば直ぐに駆けつけるから」

「知ってる」

「点滴はあとちょっとで変えるからね」

「あぁ」

「暇でしょ」

「あぁ」

「天気良いね」

「あぁ」

「外出ようか」

「あぁ」

「じゃぁベッドから起きて」

「あぁ・・・・・て、は?」



外行く気満々のはキョトンとした目でこちらを見てくる。 にや〜と笑い出したあいつ、気色悪い。



「だって、晋助さん外出ようかって言ったら、あぁって言ったよ」

「・・・・・・・・シネ」

「そんなこと、軽々と言うもんじゃありませんよ」



こいつ、俺が適当相槌打ってるのわかってて・・・・
おいこら腕掴むな。離れろ。俺は外なんか出ねぇ。



「晋助さん、入院してからベッドの上にしかいないんでしょ?」

「それがどうした。お前には関係ない」

「関係あります。手術してから面倒なことをしたくないのなら、外、一緒に行きましょ」

「・・・・・・・・」






差し伸べられた手を見る。それは、小さい。 本当に頼りない手だ。こんな手に助けられて立つなんて、むかつく。




「・・・・・自分で立てる」

「あ、行く気になった?」

「手を差し伸べられてるが嫌だっただけだ」






の手を払い除けてベッドから床へ足をつける。



「・・・・・・・・・・・・」




久しぶりに踏みしめた地面は、想像以上に堅かった。





「うん、じゃぁ行こっか」

「・・・・・・・・・・・お前と一緒かよ」

「なんてことを!!乙女にそんなこと言っちゃ駄目よ」




文句を言っているは、顔がにやけていた。非常に残念なくらい。




「お前、顔にやけてるぞ」

「え!うそっ!そ、そんな見ないで・・・」

「ククッ・・・・不細工」




急にが見てきた。
なんだこいつ。




「不細工なんて、そんな、酷い!!」

「・・・・・・・・・・きも」



不細工って言ったのに、こいつ、またにやけだした。
きもい。きもいぞ。




「まぁ今回は許してあげよう」

「お前何様・・・」

「この病院中庭があるんだよ、知ってた?めちゃくちゃ広いの」




そう言ってスキップしながら俺を置いていったあいつは本当にアホだろう。 エレベーターに辿り着くと、そいつは、いた。 俺に気づいてやってくるなり「おいてってごめんね」だと。 お前はアホだって言ってやった。



そういえば、久しぶり笑った気がする。