「、最近元気ないわね」
『・・・そう?』
「うん。大丈夫?」
『ありがと。もう少し、時間が経てば良くなるから』
「あんまり無理しないでね」
『ん・・・。』
貴方に恋い焦がれ-2-
休憩室にてお怠け中のこと。
晋助様から話を聞いて6日目。
明日はもうここを出発する。
あの日以来、晋助様はここに来ていない。
『・・・・・・・・はぁ・・・』
出発すると知らせてもらったことは嬉しいが、
やっぱりここを出るわけだから嬉しくない。
『明日、会いたいな・・・・』
私はいつのまにこんなに晋助様にはまってしまったんだろう。
遊女なのに、だめだな、私。
でも、晋助様なら、いいかな。
『・・・・・・・・・』
明日、仕事を休んで港に行ってみようか。
船とかわかんないけど。
とりあえず、先輩に明日有休とっていいか聞いてみよう。
休憩室を出て先輩のいる店の中へと入っていく。
『あの、先輩、今空いてますか?』
ちょうど先輩は今お呼びをされていないようで、
暇そうにカウンターに身体をあずけて立っていた。
「あら、どうしたの?空いてるけど」
『あの、明日の仕事について話したいんですが・・・』
「ok。休憩室行きましょ」
先輩について行き、休憩室へと向かう。
こんな時でさえ、晋助様のことを考えてしまう。
あぁ、情けないな、自分。
先輩が足を止めたので私も止まる。
休憩室に着いたようだ。先輩が先に入る。
『すみません、先輩。忙しいのに・・』
座りながら話す。
「ン?全然良いよ。私的には、が私を頼ってくれてるってことだから逆に嬉しいわ」
で?と笑顔で問いかけてくる。
ほっ。この先輩にしてよかった。
私は改めて正座をして座る。先輩は少し驚いているようだ。
『あの、明日の仕事ですが、有休をとらせてもらっていいですか?』
「あら。珍しいわね。いいわよ」
『え・・・え!いいんで、すか?』
あっけない返答に唖然としながら、少しだけ、自分がいなくてもいいんだという
空しさがいっぺんに押し寄せてきた。
「いいとも。だって、あれでしょ?高杉さんv」
にこっと笑顔で言い切る先輩。
『え、なんで知っているんですか?!』
「この間ね、あんたのいる部屋の前通ったときにちょうど聞いちゃって」
『へ?』
「明日なんでしょ?出発するの。いいわよ。私がみんなに伝えておくから」
『いいんですか!?』
「いってらっしゃい。好きな人なんでしょ?ちゃんとおめかししていかなきゃね」
じゃぁね、と言って先輩は部屋から出て行った。
意外すぎるくらいにあっさりと了承を得たことに驚きながらも
とりあえず、明日は休めるということに安息。
頑張ろう。
ふふーんと鼻歌をうたって明日の予定を頭の中で計画する。
おめかしか。さきほど聞いた先輩の言葉を思い出す。
ちょっとぐらいはしてみるか。晋助様に会うのは明日で最後かもしれないんだし。
「ー!お客さーん!」
はっ、と店主の声に身体を震わせ反応する。
は歪む視界に、手で目をこすり表へとでた。
きてしまった。
今日はあの、高杉晋助がここ、江戸を出発する日だ。
天候はいたって良好。雲一つない青空で、出航にはもってこいだ。
そして私は、いつもより早く起き、軽く気づくか気づかないか
程度のおめかしをして家を出て、港へとついたところだ。
きてしまった。という緊張と、どの船かわからないという不安との入交で
挙動不審な行動をとってしまっている私。とてつもなく痛いコだ。
とりあえず一番端にある船から見ていく。
私の想像では、晋助様のことなのでもっとこう、他の船よりは豪華なのだろうと思う。
それと、危険な、怪しげな人が行き来している気もする。
・・・・で、今見つけてしまった他のより随分と豪華で
怪しげな人物が行き来しているこの船。
いや、見つけたのはいいんだけどね、どうしろというの。
今更だけど、特に逢えるわけじゃないよね。本当に今更だけど。
もしも、本当にもしもあの船の入り口に立っている
危険な香りをおもいっきり漂わせたあの人に声をかけたとしても
話を聞いてくれるわけないだろう。てか、しゃべった瞬間斬り掛かれそうだ。
やっぱやめようかな。
でもせめてこの船が出航するのを見送るぐらいはしたほうがいいよね。
このために仕事休んだんだし。
よしっ。と出航まで待つことを決めたは高杉晋助が乗っているであろう船が見える、
人様にあまり邪魔にならない場所へと移動し、地面へと腰をかける。
いつ出るのかな。
もういっそのこと出て行かなくてもいいのにな。
晋助様に会いたいな。
そんな呑気なことを考えていると、ふと疑問が頭に浮かんできた。
私って晋助様の彼女とか、そういう女じゃないし
見送りしろとか言われた訳じゃない。
なんでここにいるんだろう。
なんでおめかしなんかしちゃってるんだろう。
そう言えば、この出航のことを教えてくれた日から
私の店に一度も来てないよね。
他の店の子にでも言いにいったのだろうか。
アホらしい。
今更自分のしている行為のアホらしさに気づいた。
出航時間もどの船かも何にも聞いてないのに、
もしかしたら、とか変な期待を抱いている自分がいた。
帰ろう。
思い立ったら吉日、だ。
これは帰ったほうが身のためかもしれない。
はすくっと立ち上がり、おしりに着いた砂などを手で振りおとす。
おめかしした顔に着物。まんまと男の手にかかってしまった自分に乾杯!
と言わんばかりに海。そして空と船に舌を出してべ〜とか言ってみる。
案外すっきりするもんだ。
にんまりと口元に弧をを描き、よし帰るかと後ろを振り向いた。
『・・・・・・・・帰ろ』
「おい、まて」
ガシッと首に腕を巻き付かれる。
ぐぇっと悲鳴(?)を出してしてしまった。
恥ずかしい。てか誰だ。こんなことするやつは。
『あの、何するんです・・!!え、なん、で?』
「何だ。俺がここにいちゃぁ悪いか?」
そこには、晋助様がいた。
『え、あの、何で、ここに?』
「お前に言いたいことがあって来た」
『え・・・・何でしょう?』
私のため。
どうしよう。期待しちゃうよ。
「お前ぇ・・・・俺についてくる気、あるか?」
『・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・おい、どうなんだ」
意味が、わからない。
え?と聞き返す。
それに晋助様は溜息をつき、クソッと言いながら
「俺の側に、これから、ずっといてくれねぇか?」
心臓の音が、耳元で聞こえてくる。
これは、本当に現実なのだろうか・・・?
『これは・・・・現実、なのでしょうか』
「・・・・・・・・何言ってんだ」
すると晋助様を私の腰へ腕をまわして引きつけた。
抱きしめられてる。
そう気づいたと同時に、顔がボッと真っ赤に染まる。
今更だが、久しぶりの抱擁に緊張する。
『し、んすけ、様・・・?』
ぎゅうぅっと抱きしめる力が強くなる。
「嘘じゃあるまい。今、俺の腕の中に、お前ぇが、確かにいる」
『っ・・・!!晋助、様』
切なそうなその声に、胸が締め付けられる。
「なぁ。もう一度聞く。お前ぇは、俺についてくる気はあるか?」
『・・・・・・私で、よければ』
「・・・・俺についてくるってぇことは、幕府を敵にするんだぞ。それでも...」
『晋助様の、お側に居られるのなら、怖くありません』
フッと笑った気がした。
晋助様と身体を離し、船へと向かう。
『ところで晋助様、なぜ私の場所を・・・?』
「あぁ、それは・・・・お前が見えたんだよ。」
『船から?』
「あぁ。意外と見えるもんだ。それに、お前ぇ船の前にいやがるしな」
微笑するこの人は、嬉しそうに私を見る。
私は恥ずかしくて仕方がない。
『それは!あそこが一番邪魔にならないし、船が、見えるから・・・』
「・・・・・・俺を待ってたのか?」
『・・・・・・・・知りません』
「ククッ。知ってるか?」
『?何をですか?』
仕方ねぇから教えてやるよ。とか言う。
言いたくないなら話に出さなきゃいいのに。
「店にお前ぇを迎えに行った」
『・・・・・・・・・うそ』
「嘘じゃねぇ。あとな、お前ぇの知り合いに、お前ぇが俺を見送りに行ったってぇのも聞いてなぁ」
『来て、くれたんですか』
「港中探し回ったが姿が見あたんねぇ。諦めて船に乗ったらを見つけた」
『ありがとうございます』
「見つけたと思ったらお前ぇ帰ろうとするから驚きだ」
港中って、ここ、案外広いよ。
嬉しいな。晋助様に感謝だ。
『ごめんなさい。諦めて帰ろうとしたんです。でも・・・晋助様に逢えました』
「・・・あぁ」
『それに、ついてこいとも言ってくれました。これって、運命ですかね?』
「さぁな。しらねぇよそんなこたぁ」
『私、晋助様が好きです』
「!!」
『何を言われようと、離れませんから』
すると晋助様笑顔を見せて、俺も離さねぇって言ってくれた。
貴方に、愛を捧げます
すみません。長い間放置をしていて・・・。
前半を書き終えたときとちょっと話を変えてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
なんだかんだ言って、運命ってあるもんだよねぇと
思いながら書きました。最後話長い!すみません。
happy endに満足です。読んで下さった方、感謝です。