「あ」


「おぉ」






ばったり。街中で出会ったのは、銀髪頭の万事屋さんでした。
片手を挙げて、いつものように天パをひょこひょこ揺らしながらこちらへ歩み寄ってくる。






ちゃーん、久しぶりだねぇ」


「いや、昨日も出会ったんですけどね」


「あれ?そうだったっけ」






まぁ出会ったというか、私が勝手に家に入っていく背中を見つけただけなんだけど。
そんなこととも知らず、「あれ?嘘。ちゃんに出会ったのを覚えてない?・・・うそおん!!」
となにやら嘆いている。見ているこっちは面白いからいいんだけどね。





「いや、私が見かけただけなんですから」


「あ、なんだ、そうだったの。よかったー」






心底安心したらしい万事屋さんは「そう言えばさぁ」と険しい顔をして話し始めた。





「最近本当冷え込んできたね」


「そうですね。雪降るのも遅かったですし」


「なのにみんなよくこんな寒い中外出歩いてるよね」


「そうですね。私達も例外ではないと思いますが」


「まぁそうなんだけど。特に最近、若い女の子達よく見かけるんだよね」


「そうですね。まぁ明日バレンタインデーですものね」


「・・・・・・!!!!!!」


「??どうしたんですか?」



その言葉に万事屋さんは「え!!」と反応し、よくみるとこんな寒い中汗を流している。





「そ、そそそそ、そうだよねぇ、女の子達の勝負の日だもんね!うん」




急に焦り始めた万事屋さんをおかしく思ったが、おかしいことはいつものことだ。
特に態度の急変ぶりにつっこみはせずに話を続ける。





「そうなんですよ。でね、実は今年、私も勝負をしようかなぁ、なんて・・・」





思い切って私の心情を伝えた矢先、ドスン!!!と盛大な音が聞こえた。
ん?今、隣から音がしたような・・・・
恐る恐る横を見る。と、














「ど、どうしたんです、大丈夫ですか?!」


「へえ???」






大げさなくらいに尻餅をついて、目に涙を浮かべている万事屋さんがいた。
いや、正直に言えば一粒の涙はもうながしていた。






「あーはははっはははは・・・」


「・・・・た、立てますか」




手を差しのばして、手を握る。「よっこらしょ」と言って万事屋さんは立ち上がった。



「・・・・・・・・うん。ありがとう」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」







なんなんだろう。この微妙な空気は。
というか何故あそこで万事屋さんは転けたのだろう。


銀時が立ち上がった後、2人はまた歩き始めたが、沈黙に包まれていた。
一方的に銀時の気分ががた落ちしたのが原因なのだが。




「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「あ、あのさ、ちゃん」


「・・・・はい?何でしょう」





意外にも沈黙を破ったのは銀時だった。





「そのぉ・・・勝負って、誰かに・・・渡すって、ことだよね?」


「まぁ・・・はい。そうです」


「・・・・っ!!!」




だからさっきから何に反応しているのだ、この男は。




「何か、渡してはいけないことが??」


「いやあ!!?そそっそおんなこと、ああああああるわけないじゃん??」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」






おかしい。
この人、いつもよりおかしい。






「あの、今日頭大丈夫ですか?」


ちゃん!!!」


「っ!!!な、なんですか」




ちょっと(いやかなり)失礼な質問をしたが、それはまったく聞いていなかったようで、
よかったんだか、悪かったんだかよくわからないけど、まぁこの際よしとして。
いつもに増して真剣な表情をしている万事屋さんに、逆に笑ってしまいそうになる。





「その、あげる相手・・・・聞いてもいいっすかあああああ」


「はぁあ??そんな!!恥ずかしくて言えませんよ!!!」




何を聞いてくるんだこの男は。
女心というものがわかっていないらしい。





「いや!!もしかしたら俺が協力してあげることもできなくもないような・・・」


「なんでそこ自信ないのよ!!ていうか協力されても困ります」


「えええ!??俺じゃ力不足ですか!!!」


「いや!!そういうわけじゃないですけれど!!!!!!」





両者は肩を上下に揺らして息をして、いつのまにか大声で話し合っていたことに気づいたのか、
顔を真っ赤に染める。そして少しの沈黙。





またしてもその沈黙を破ったのは銀時で。






「あの・・・1つ、聞いてもいいですか」


「・・・・どうぞ」


「義理チョコとか、他の人にあげるんですか」


「・・・・そりゃぁ、あげます」


「・・・・それじゃぁ」







ひゅう、と風がひとつ吹く。
その風の音と共に息を吸い込んだ銀時。







「俺にも、義理チョコでいいから・・・くれません、か」


「・・・・・え」





言っちゃた。的な顔をしている銀時に、ぽかーんとアホ面をしている
そしてプッと吹きだした







「ごめんね万事屋さん。私、あなたに義理チョコあげれないわ」


「え・・・・・」






軽々と銀時のお願いを断った。しかも、笑顔で。
もはやこの世の終わりと言わんばかりの表情をしている銀時を嘲笑っているようで。
さすがに、案外シャイな男が精一杯の告白(?)をしたというのに、さすがにそれはないだろう。
しかし銀時は言い返すような気力はもう残っておらず、「そう、ですか・・・」と
消え入りそうな声でそう言って万事屋へと足を向けた。








「ごめんね、万事屋さん。義理あげれなくて」


「・・・・いやー、そんな、しょうがないですよ」





ゆっくりと振り返って弱々しく笑い、そう言う銀時は、もはや危篤状態のおじいちゃんと言うべきであろうか。
そしては最後の追い打ちと言わんばかりの笑顔で手を振った。











「・・・・・・銀さん、もう死にそう・・・・・」















ぽつり。小さく呟いた。








暗い影を背負っているような後ろ姿に向かって、は赤面しながら大声で言った。













「銀さんには、本命チョコしかあげないから!!!!」













「・・・・・え?」











今、抱きしめてもいいですか。


















主人公焦らし倒しですねщ(´∀`щ)ヶヶヶ
銀時の絶望に満ちた顔が想像できてしまう私。
多分絶対不細工だb