『ねぇくん』
「・・・・・・・」
『あの、君?』
「・・・・・・」
無視ですか。
もしかしていじめ?これっていじめ?いじめですか。そうか。
クソ野郎。視界が歪んできやがった。
今日は久しぶりに二人とも仕事で休みがとれたので
私の家でくつろぎ中。
いや、ね。くつろぐのはいいけどね。
その、無視はしないでほしい・・・と思う。
やっと1日一緒にいられると思って、喜んで朝ご飯作って
家に迎え入れたのはいいんだよ。うん。そこまではね。
そしたらこいつ、こいつこと君。
朝ご飯食べ終えたら、ソファーに移動してテレビ見ていた君。
私は隣に座って一緒にテレビが見たかったので、急いで洗い物を終え、
ソファーへと向かった。そして君へとしゃべりかける。
そこまではよかったのよ。
『君』
「・・・・・・・」
『あのテレビの人さ、』
「・・・・・・」
『この間の映画に・・・』
「・・・・・・」
そして冒頭へと戻る。
酷くないですか。
仮にも私貴方の彼女なはずなんですけど・・
もしかして嫌われてる?!しょうがなく付き合っちゃってる感じですか。
仕方無いか。こんなうっとしいやつはそりゃ嫌いにもなるだろう。
一人で勝手に気分ダウンをすると、膝を立ててそこに顔を埋める。
『・・・・・』
もしかしてこの無言は、側に近寄るな警報?
ま、とりあえず喉が渇いたからついでに移動しよう。
『・・・・君も、お茶いる?』
「烏龍茶ね」
『あ、うん』
そこはちゃんと応えるのね。
本格的に私、危うい位置に立たされてる気がするんですけど。
だって彼女の座から、もう召使いに格下げされちゃったよ。
ハァ、と溜息をつきながら台所へと向かう。
そういえば抹茶アイスクリーム買ってたよね。
しかも一つ。ふっ。君にはあげないとこう。
お茶とコップ二つを持ち、ソファーの前の机に置く。
そして私はもう一度台所に戻ると、アイスとスプーンを持ってきた。
よいしょ、と君とは反対側、机の向こう側の地べたに座る。
君は私の持ってきた一つだけのアイスとスプーンに気づいたらしい。
「、それ誰の」
『私の』
ぱかっと蓋を開けてスプーンをさす。
「俺のは」
『ない』
どうだ。お返しは。
悔しいだろ。
「ふーん」
彼はそう言ってお茶をコップに入れ飲み始めた。
そんな彼の姿を見て、かっこいいな、と素直な意見を持ってしまう。
確実に整っているその顔、身体、声。
全てに私は酔いしれて・・・じゃなくて。
もう君なんて知らないんだ。
大嫌いだ、あんなやつ。
頭の中でグチグチ言っていると、君が立ち上がった。
ビクッと身体が震える。おそるおそる君を見ると、
私へと向かってきていた。
脚の長さを強調するかのように、
4、5歩ぐらいで私の側へと辿り着く。
なにをするんだ!と、心の中で身構えていると、
ふわり、とシャンプーの香りがした。
あ、君のだ。
すると香りと共に、私のとは違う温かさが身体を包む。
君が、私を脚の間に挟み、抱きしめて座ったのだ。
『ちょっ、君!?』
そっと私の手を握る彼。
掴んだ手をアイスへと誘い、アイスをすくえば
君の口へと運ばれた。
肩の顔があったため、耳元でかちゃ、と
歯とスプーンの当たる音が聞こえる。
ぞくり。
背筋に電流が走ったかのような感覚。
心臓がドキドキと早鐘を打つ。
恥ずかしくなって、うつむくと、
肩の上で口が動いた。
「ん、ちょっと甘いね」
『・・・・・・・』
「、今度からは二つ買ってきてね」
『・・・・いや』
ぽつり。つぶやく。
それに対して、君は「どうして?」と
わざと耳元に口を近づけて問う。
恥ずかしくて死にそうだ。
『だって・・・・君、いじわるするから』
聞こえるか聞こえないかぐらいの音量でいう。
羞恥心で頭がいっぱいになった。
「・・・は、俺のこと、嫌い?」
『・・・・きら・・っい・・!』
耳を甘噛みされ、言葉が途切れる。
クスッと後ろで笑い声。くそう。人を弄びやがって。
「俺は、のこと好きだけど」
『・・・・・・・・うそつき・・・』
「だってさ、が、俺のために朝ご飯作ってくれて」
低く、甘い君の声が直に鼓膜に響く。
頭の中がとろけていくよう。
「俺の側に来たくて、早く洗い物を済ませてくれたこととか」
『なっ!(き、気づいてたのか)』
「ぜーんぶ。俺のために頑張って、俺のせいで悲しむが、俺は好きだよ」
『・・・・君のため、じゃ・・なかったら?』
「それでも好きだよ。特に俺のため、なが好きってこと」
ね?と問う君は、本当に綺麗だと思う。
うん。見習おう。「あとね」君が続けて口を開く。
「そんながかわいいから、いじめたくもなる」
『!!な、なによそれっ!』
「だって、の泣きそうな顔とか、意地張ってるところとかも、かわいくて」
クスクスと笑う。こいつ。むかつく。
むかつくけど、あんなこと言われちゃったら反抗なんかできない。
「ね、。は、俺のこと嫌い?」
再度問う君に、私は抱きついて
『大好き!!』
君は嬉しそうに笑った・・・気がした。うん多分そうだ。
すると口元への違和感。
あ、キスしてる。
気づいた私は、君の首へと腕を回した。
好きなんです。
好きすぎるから、いじめたくもなっちゃうんです。
嫌いなんて、言わないでよ。